しなのの第一人者

副菜に高度成長期以降、ご飯粒よりも、おかず大事の影に置いてきぼりにされてきたふりかけが、実はご飯には欠かせない最小限のパートナーとして、日本人の味覚、食の美意識に根深く染み付いている。 ご飯にのせる彩り。
ただしそれ単品では副菜として成立しないもの。 ふりかけの定義を仮に設定してみた。
ご飯の歴史を追うことで、ふりかけの歴史をひもとくことができるのではないか。 幸いなことに料理文化史をはじめ、米そのものについての研究も数多く報告されている。
米や小麦、とくに東南アジアにおいて、米を中心とした穀類は、私たちの営みに不可欠の要素だった。 別の漁師は粟の袋を語っている。
籾も粟も、万が一漂着したと大地を耕し、植物を成育させる。 収穫の喜び、それを料理して口にする楽しさ。
どんな食物でも捨てるところはない。 籾殻は家を建てるときの断熱材にし、稲藁は俵や糠、縄、わらじ、肥料など用途はかぎりなかった。
糠からは油をとり、糠漬けには野菜だけでなく、サバ、イワシ、フグ、ニシンも保存のために使われた。 漬け込むことで、同時にフグの毒が抜け、別のうま味が増すという利点もあった。
炊いたご飯と塩で漬け込む馴れ佐川も、水田の周囲にある用水路を行き来する動物性の食材を、保存しながら、よりおいしくするために生まれた稲作地帯の食文化だった。 こういった知恵や技は、米作りとともに伝えられ、日本の風土に見合った形で解釈、伝承され、その一連の流れが、借りものではない、独自の食文化を成熟させてきた。

米イネ科イネ属の植物の種実(穎果) をいう。 世界における米の総生産は籾米として年間四億トンに近づき、コムギ、トウモロコシとともに世界の三大穀物といわれる。
米の九O%近くはアジアで消費される。 日本人の主食として重要なことはいうまでもなく、インカード、中園、東南アジア諸国と極東諸国を含む地球人口の半分以上にとって重要な食品である。
(小学館米とはイネの種子であり、可食部分を指しているから、厳密には米と稲はイコールではないのだが、今や稲川米であり、稲作H米作りで、ほとんど同義に使われる。 イネの最古の呼び方はサンスクリット語の「ヴリヒ」。
これがなまって日本語の「ウルチ」になったという説もある。 古事記には志泥(しねて万葉集には伊奈(いな) と表記され、中国では稲を梗(うるち) 種と嬬(もち) 種に分けている。
縄文晩期から弥生期にうつる第一の特徴として、中国大陸南部から栽培方法が伝播したとされる稲作だが、平安期には東北まで広がり、鎌倉期には、すでに津軽の水稲栽培が可能だったと推測される。 飯はもともと穀類を炊いたものの総称で、「いい」または「めし」と発音される。
は「召す」の名詞化「召し」からとされている。 戦時中の銀シャリではないが、「しやり」という表現は仏教用語で聖者の遺骨。
火葬にしたときの骨の白さと米の白さ、尊いものとして重ねたイメージからつけられたようだ。 享和二(一八O 二) 年、米料理の専門書として杉野権兵衛著『名飯部類』が出され、日本初のご飯百科として現代語訳されている。

その最初に登場するのが尋常飯の部、家常飯(炊干し飯) 。 であり、来客への最初の膳に出るものでもあるので、述べる。
人の好みは普段食べている飯の固いか柔らかいかの違いにあるので、中くらいに炊けば万人向きとなろう」新米、古米の水加減の説明に続いて、やりうたとはいえ、炊飯の要点をうまくついているので、俗なことではあるが載せておく」ご飯の固さの好みが微妙にちがうことは、現代では当然のことだが、ご飯がかなり一般的に食べられていたということは明らかである。 ここで炊飯の歴史について軽くふれておこう。
多くの日本人にとって、主食の基本が米以外の雑穀だった時代は長い。 そのひとつである湯立て法は農村には最近まで残っていたという。
一九世紀初頭すでに米のわし、そのあと蒸して飯にする」(中尾佐助『料理の起源』ゴロギャという細い板でよくかきま湯取り法など、現在の炊飯方法とは別の炊き方のほうが主流だった。 現代の典型的な炊飯は炊き干し法になっているが、金属の釜が普及してからの方法である。
古代から中世にかけては土器が中心なので炊き干し法ではおこげができやすく、そのおこげがくっついてガリガリになり、次の炊飯に熱伝導がうまくいかなくなる。 そのうえ、すくなるため、土器鍋に適した炊飯として湯取り法が定着していたともいえる。
米の食べ方は、素朴な焼き米もあったようだが、土器で煮る「粥」は水の量の多少によって、弥生期は汁粥中心で、その後固粥も広がり、室町から江戸期にかけては、その両方がそれぞれ新しい具材と出会って、炊き込みご飯や混ぜ飯、雑炊のような形で、いろんな食べられ方をしていった。 兵糧食としては、玄米を蒸して乾燥させた「干飯」に湯をかけて食べる「湯漬け」や、水をかける「水飯」もあった。
「干飯」などは、いまのインスタント食を街梯とさせる製法であり、食べ方になる。 奈良、平安期の文書に登場する「屯食」は、握り飯だとする説が有カードで、当時はたいへんな賀沢品だった。
干飯がすたれて、やがて握り飯が一般になるのは明治以降。 駅弁の最初は明治一八高価なものだったようだ。
駅弁の定番となっていった幕の内弁当の条件を江戸期の文献にみることができる第一に、ご飯は小さな俵型に握ってあること。 第二に、俵型ご飯を握っただけでも、これをあぶってもどちらでもよい。

第三に、俵型ご飯の上に黒胡麻をふりかけてあることが関西では多く、江戸では必ずしもそうではない。 第四に、おかずの煮物がしっかりと付いていること(『江戸商標集紫草』)。
ご飯に黒ゴマというふりかけ的なあしらいは、関西中心に定着していたことがうかがえるが、白いご飯のうえのゴマのあしらいは、彩りとして、味わいとして、おいしくみせる大切な要素。 こういうあしらい物の系譜が関西からというのは、食に対する、より貧欲な関西人の気風がみえるようだ。
もう一点、幕の内というのは、もともと煮染を指していたという。 おせち料理でも、お弁当のなかの、ちょっとした煮物には、ほかのどのおかずよりも、しっかりとだし汁が含まれていて、たとえば高野豆腐の汁気のように、その水分とご飯の取り合わせは、ほっとするおいしさを演出していた。
現代のふりかけが商品化される以前、江戸時代までさかのぼって、ふりかけという存在を見つめてみたいと思う。 江戸期は現代に通じる食の献立やスタイルが確立され、物産の生産や流通の変化から、般の人たちが食べることへの興味、関心を高めた時期である。
寛永二O (一六四三) 年に出た「料理物語」という、初めての本格的な料理専門書をきっかけに、「豆腐百珍」(天明二(一七八二)年) 、『甘薯百珍』(寛政元(一七八九) 年) 、『鯛百珍料理秘密箱』(天明五七八五) 年) など百珍もの、そのほか会席料理、お菓子、精進献立など、多岐にわたる料理本が続々著された。 農耕技術も発達し、さまざまな外来種の栽培もさかんになる。

塩、酢、味噌以外に醤油、砂糖が広がり、かつお節などうま味調味料の発達も料理技術を高めるきっかけになった。 食べもの屋台が繁盛し、茶屈などの小料理屋が都市中心に増えていった。

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